株主手帳連載:テーマ「カジノ」

月刊誌「株主手帳」にアイ・パートナーズフィナンシャル自由が丘オフィス代表である原田茂行が毎月掲載している連載をごちらでお読みいただけます。 ぜひ今後の投資の参考に、ご一読ください!

今月のテーマ:統合型リゾート(IR)

先進国を中心にワクチン接種が進み、世界では旅行需要回復の兆しが見えてきました。こうしたなか、日本ではコロナ後の観光客獲得への取り組みとして、統合型リゾート(IR)の実現へ向け、議論が活発になってきています。ギャンブル依存症を増加させるのではなど、慎重論もありますが、統合型リゾート(IR)からどんな経済効果が期待できるのか、また関連銘柄を複数とりあげていきたいと思います。

IRはカジノだけではなく複合型集客施設

統合型リゾート(IR)と言えば「カジノ」という印象が強いですが、実は統合型リゾートは「MICE」と呼ばれる施設を核として、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場、映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設が一体となった複合型の観光集客施設を指します。

MICE,つまりMeeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行)、Conference(国際会議・学術会議)、Convention(展示会)、Eventが合わさることで、一般的な観光より経済波及効果が大きくなり、ビジネスイノベーションの機会創出が、都市の競争力を向上させると考えられています。

日本では非合法であったカジノは、法制化への道が開かれ、18年のIR実施(整備)法の成立によりIRを整備できる区域が3か所以内に、専用スペースは全延床面積の3%以下と規定され免許を持つ事業者が行います。

世界のカジノリゾートの回復

現在世界では、約130の国と地域にカジノはあり、4000以上の施設が営業中です。その市場規模は10兆円を超えます。

新型コロナの影響で大手の米ラスベガス・サンズが日本進出を見送るなど、打撃を受けたカジノ業界ですが、ワクチン接種が進むアメリカを中心に着実に回復しており、アメリカン・ゲーミング協会によると、アメリカの4月のスロットマシンを含むカジノの月間収益は過去最高を記録しました。

日本のカジノリゾート開発のゆくえ

日本でも、IRへの参入を目指す自治体や企業が動き始めています。

IR事業への参加は現在「大阪府・大阪市」、「和歌山県」、「長崎県・佐世保市」が誘致を表明しています

長崎県は、西日本鉄道(9031)や九州電力(9508)などが出資し、エイチ・アイ・エス(9603)が佐世保で運営するテーマパーク「ハウステンボス」への誘致を目指しています。

中国から近い長崎はクルーズ船による集客も可能で、東京ディズニーリゾートに匹敵する敷地を擁するハウステンボスには、総額2500億円を投じた施設が既に存在しています。

大阪市は、25年に大阪万博が開催される夢洲に誘致を目論んでいます。

大阪府・市の公募では、米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックス(8591)の企業体だけが応じ、事業者として選定される公算が高まっています。

IR事業関連銘柄

そのほか、統合型リゾートの関連銘柄は、

インターライフホールディングス(1418)、テックファームホールディングス(3625)、日本金銭機械(6418)、ユニバーサルエンターテインメント(6425)、コナミホールディングス(9766)。

IRは文化と娯楽の複合型のリゾート施設

米ラスベガス・サンズが6500億円(土地を含む)かけて開発し、運営するシンガポールのマリーナベイ・サンズは、500のテーブルと1600のスロットが並び、2561室のホテル、12万㎡のコンベンションセンター、7万㎡のショッピングモール、美術館、シアターを含んだ複合型施設で、老若男女を問わず家族全員が楽しめるリゾートです。

これはまさに日本が目指しているIRの姿と言えるでしょう。

IR事業にたいして、治安の悪化やギャンブル依存症の増加を懸念する反対派がいるのも事実ですが、大衆娯楽が出発点のパチンコとIRのカジノを同列に並べるべきではないと考えます。文化と娯楽が融合して楽しめる観光業界の新たなる富裕層ビジネスとしてIRを捉えるべきです。

当然ながら、後発となる日本のIRは様々な障壁に直面することが懸念され、アジアだけでもシンガポールをはじめマカオや韓国などの強敵が存在します。しかしながら、日本が誇る観光資源やコンテンツを活用することで、洗練されたホスピタリティによるインバウンドサービスの構築が可能であると考えられます。